感覚としてフィーリングシグナル

縷々として感じたことを

日々を縷々として書留ます。

僕の臓物を君にあげる #1

「は、はい!御社を志望した理由は、御社のサービスを通じて…」
(何言ってんだ俺は…)

「自分の積極性と好奇心には自慢があります。常に新しいことを生み出すのが…」
(思ってもいないことがこうも出てくるよ…)


…「ありがとうございました、失礼します。」
(やっと終わったよ…)




ー厳正なる審査の結果、誠に残念ではございますが…

まただ。
これで…30いくつか目の"誠に残念ではございますが"だ。
20を超えてからちゃんと数を数えるのはやめた。数えることに意味を見出せなくなったから。

大学の友人はみんな口を揃えてこういう
「早く就職したい」と。

僕には理解ができない。

SNSを見れば社会人の人達なんてみんな働きたくない、と、月曜が嫌いだ、とみんなして嘆いている。
テレビのワイドショーはブラック企業とか過労死とか長時間労働とか…セクハラとか、
そんなんばかりだ。

なんでこんな環境で、こんな国でみんなは働きたいと、就職したいと言えるのだろうか。

働きたくない。
就職したくない。
ずっと自由でいたい。

でもその自由を得るためには働けって?
…知るか。



ー「ありやとしたぁ。」
死んだ目をしたコンビニ店員の辛うじて聞き取れる挨拶を背に溜息を零した。

外は暗く、天気もイマイチで星も見えない。

こういう夜は本当に気分が悪くなる…


東京の街は煩い。
でもこの騒がしさが僕は好きだ。

街の喧騒に少しだけ、癒される。


大きな通りの脇に踏み入れ、
街灯も減り静寂と暗闇に襲われる。

この帰路は嫌いだ。



「なんで俺ばっかりこんな…」
「なんで…!!こんな…!!クソっ!!!!」
人気のない路地で声を荒げた。



ガサッ、ガサガサッ


変な物音がした。聞き慣れない音。
何かを掻き毟るような音、それと咀嚼音の様な音。

少し先の方、から聞こえた。
多分、目前の十字路の右の路地から。


ただただ無心だった。

吸い寄せられる様に、導かれる様に、
足を運んだ。




「ッッ!!!」

目の前の状況、光景を理解するのに数秒を要した。
あまりにも不思議で、異様で、そして美しかったから。



こちらに背を向け、女性が路地の端に屈んでいた。
何かを拾い上げる様な姿勢で。いや、地面を掻くようにして。

肩に掛からない程度に伸び、一目で手入れが行き届いていると分かる程に綺麗な銀色の髪が揺れていた。
黒いロングのワンピースを着ていたから余計にその髪が目立ったのかもしれない。

"銀髪の女性"は地面にある"何か"を手に取り口に運ぶような動作をしていた。


グチャッ、くしゃっ、みちっ、めちゃっ


咀嚼音だ。彼女はその"何か"を食べていた。

その"何か"は赤黒い色をしていた。
丸く、ボールの様な形状をしていた。

そう、まるでそれは臓物の様だった。
様だった、というのは臓物を実際に目にしたことがないから。



思わず声が漏れた、その時。

彼女がこちらに振り向いた。




大きな瞳をして、
長い睫毛に、奥二重な顔。
唇は薄く、肌はとても白かった。



彼女は驚いた表情でこちらを見つめた。



口から赤黒い液を垂れ流しながら。





僕はそんな彼女を見て思った、




美しい、と。