「あつまれ どうぶつの森」はなぜ売れたのか -SNS時代の自己顕示と現実逃避-
近日SNSを賑わせている任天堂の新作ゲーム「あつまれ どうぶつの森」。
発売以降、私も連日このゲームの虜となっている。
今回はこの「あつまれ どうぶつの森」(以下あつ森)について、
なぜここまでの人気を博したのか、個人的見解を中心に紐解いていく。
この記事を読んでいる方は少なからず「あつ森」に関心のある方だと思うが、
改めてこの「あつ森」について軽く紹介を。
2020年3月20日に家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」向けに発売されたテレビゲーム。
キャッチコピーは「何もないから、なんでもできる。」
これまでにスピンオフ作品を除く過去7作品が発売されている「どうぶつの森シリーズ」の最新作。
これまでの「どうぶつの森シリーズ」は「村」が舞台であり、プレイヤーの分身である主人公は「むらびと」としてどうぶつ達が暮らす村へ移住し、スローライフを楽しむゲームであった。
しかし、今作「あつ森」はシーリズ初「無人島」を舞台としている。
プレイヤーは何もない、手付かずの無人島にテント1つで移住し、必要な道具などは、現地で「DIY」を行い作成する、商店などの施設を立ち上げ購入することで入手することが出来る。
現実の世界と同じ時間が流れる無人島で、ゲームを進めると移住してくるどうぶつ達の交流を楽しんだり、家具や道具を手作りして島や自分の家を飾ったり、魚釣りや虫獲りを楽しんだり、他のプレイヤーと島で交流したりと、
様々な楽しみ方ができるのがこのゲームの魅力だ。
人気シリーズの最新作といったところもあり、発売後3日間でパッケージ版売上本数約188万本を達成。4月19日には累計売上約361万本と驚異の売上実績を残した。
この数字だけでもとんでもない怪物ゲームだというのが感じ取れるだろう。
と、このゲームの内容紹介はこのあたりにしておいて本題に入ろう。
「SNSとの親和性の高さ」
正直なところ、発売前このゲームに対する興味は薄かった。
当初この「あつ森」は2019年内に発売予定であった。しかし延期に次ぐ延期により発売日は3月20日に。
発売直前の公式PVや、twitterなどのSNSでの発売前からの盛り上がりに感化され私自身もダウンロード版を発売日当日に購入した。
ゲームキューブ版の「どうぶつの森+」を当時楽しんでいたこともあり、懐かしさ補正もあり虫を捕まえたり、魚を釣ったりと気ままに楽しんでいた。
しかし、当時と違う点が1つ。
SNSの普及である。
twitterでは発売直後、私のタイムラインでは
「うちの島にはこんな住人が引っ越してきた!」
「こんなレアな魚が釣れた!」
などとスクリーンショットを添えた「あつ森」関連のツイートで溢れかえっていた。
インターネット黎明期には見えてこなかった、他のプレイヤーのプレイスタイルが自然と見えてくる。
「Nintendo Switch」に搭載されたスクリーンショットや動画をSNSに投稿する機能を駆使し、皆様々「あつ森」実況を楽しんでいた。
これだけならば、ただ他のプレイヤーのゲーム画面が共有されるだけなのだが、
そこから見える各プレイヤーのゲームスタイルに本質が見え隠れしていた。
自由度の高いゲームなのもあり、同じゲームの画面でもそれぞれ違う遊び方が垣間見えた。
島の作り込みに躍起になり、自分の思い描く島作りに勤しむ者。
レアなアイテムや虫、魚の収集に励むコンプ勢。
お気に入りのどうぶつ達だけを島に勧誘する住民厳選勢。
出現するアイテム(家具)やどうぶつがそれぞれの島で異なる、ランダム性の高さが助長しそれぞれ個々の島を紹介する、紹介合戦が日夜行われている。
友達同士の内々だけでなく、遠く離れた顔も知らないプレイヤーのゲームスタイルが見えてくる。
自由度が高すぎるが故に、ゲームの目的を見失う人も少なくなかったと思う。
ただ今回は他のプレイヤーのゲームスタイルが見えてくるために、遊び方の指標とすることが出来る。
あの人のような島作りをしたい、あのレアな魚を釣り上げてみたい、といったようにSNSがプレイヤーの目標設計に一翼を担っていたと考える。
SNSにより、自由に囚われず、自由なプレイスタイルを建築できたのではないだろうか。
「現実から自由への逃避」
発売前、2019新型コロナウイルスの影響で「あつ森」Nintendo Switch本体セットの生産に遅れが生じ、発売が延期になったことはファンにとってはとても嘆かわしい事件であった。
延期に次ぐ延期により、ゲーム発売日、2020年3月20日と同時期に世界的に発生している非常事態宣言やロックダウンといった対策により発生した「巣ごもり消費」も売上を底上げに繋がっただろう。
自宅に居ながら楽しめるテレビゲームはこういうとき本当に都合がいい。
さて、なぜそんな時勢のなか「あつ森」が多くの人を魅了したのか。
このゲーム、とにかく遊べる要素が多すぎる。
真っ新な無人島を開拓していくのがコンセプトなゲームもあり、こだわり始めたら終わりのないゲームだ。
アイテムを作成する「DIY」を駆使して島を自分好みに彩ったり、多くの種類が存在する生き物の採取を楽しんだり、化石を発掘し博物館へと寄贈をしたりと、やり込み要素が多く退屈せずに遊び続けることができる。
加えてこのゲームでは舞台である無人島が現実と同じ時間を流れる。それ故に昼には昼の景色、夜には夜の景色がゲームの中でも楽しめる。また、1日のうちに購入出来る家具や、発掘できる化石の数に限りがある。
この制限がバランスよく、1日のうちに過剰に遊びすぎず、飽和状態にならず飽きを感じさせにくいゲームデザインになっている。
自宅にいる時間が増え、遊ぶ時間を確保することができるため、化石集めや家具購入といった必要な行動を完了させることができ、余裕のできた時間に自分の好きな遊び方で楽しむことができる。
それでもプレイし尽くせないほどのボリュームである。
このやり込み要素が「おうち時間」が増えたプレイヤーの射幸心に刺さるのではないかと考えられる。
「発生する無法地帯」
これは少し本題から逸れる内容ではあるのだが、凄く現代らしいアーキテクチャが生まれているため、それについて少し触れておきたい。
この「あつ森」には多くのランダム要素が含まれている。島や自宅に飾る「家具」の存在。日々買取価格が変動する「カブ」。プレイヤーの島に住み着くキャラクター「どうぶつ」。
これらがそれぞれのプレイヤーにはランダムで生成される。あるプレイヤーの島には「青色のベッド」しか商店で売られていないが、他のプレイヤーの島では「赤色のベッド」が入手可能であるケースが発生する。特定の条件で島に移住してきたり、また去っていく個性豊かな「どうぶつ」達もまた、完全にランダムで割り振られる。加えてこの「どうぶつ」達は引っ越すフラグが発生すれば他のプレイヤーの島へ譲渡することが可能である。
これらのランダム要素を巡って、twitterなどのSNS上では"取引"が行われている。
「どうぶつ」や「色違い家具」をゲーム内通貨や特定のアイテムと交換条件で"取引"されている。
酷い事例では、いわゆるRMTが行われいる場合もあるとかないとか…
この辺りはtwitterでそれらしきツイートを見かけただけで、自分が直接関わったわけではないので真意は定かではない。
また、面白いのがそれだけでなく2次創作が多く生まれ漫画やイラストがSNS上に投稿されている。
ここまでは流行りのコンテンツに見られるありがちなが展開。だが「あつ森」の面白いところはターゲット層、プレイヤー層がtwitterらしからぬ層が多いところだ。
当然の流れとしては、2次創作のイラストやいわゆる同人誌を即売会などで販売するというのがある。だが「あつ森」プレイヤー達はtwitter上で『有償でtwitterアイコンを描きます』をタイムライン上で依頼を募り、お小遣い稼ぎが行われている。
「LINE Pay」や「PayPay」などの仮想通貨を駆使しして金銭のやり取りが発生している。
なんともこの縮図が現代らしい、「あつ森」らしい、これまでのサブカルチャーコンテンツとの違いが垣間見えた気がする。
こういう風に、自然とグレーな"取引"が行われているのも、これまでのコアなネットユーザーにはみられなかった新しいインターネットの在り方のように見え、非常に興味深く感じた。
以上、だらだらとありがちなことをつらつらと綴ってみたが、少しでもお楽しみいただければ幸いです。
私自身はこの「あつ森」をマイペースにまったりと楽しんでいます。
それぞれのペースで楽しめるのも、このゲームの良さですね。
興味を持っていただいた方、ぜひtwitterもフォローしていただけると嬉しいです!!
また気が向いたらこういった具合にゲームレビューなんかも行えたらと思います!
ではまた。